涙の流れ道を再建する涙道手術
涙道とは、「涙腺」でつくられ涙が目の表面を潤した後、目頭にある「涙点」→「涙小管」→「涙嚢」→「鼻涙管」を通って、鼻の奥へと流れ通っていく道のことです。
涙道が詰まったり、細くなったりして通りが悪くなると、涙がこぼれやすくなる、目やにが出るのが続く、感染症を引き起こすといった症状が出ます。
目薬では治せないような状態になると、涙道を手術によって開き、涙の排水路を作ります。
涙道手術を行う疾患・症状
疾患
涙道閉塞
涙道には元来細くなっている部位や曲がっている部位があり、様々な原因でその部位が閉塞することがあり、これを涙道閉塞と言います。
症状には、涙目(流涙症)や目やにが出る、目のまわりがただれるなどがあります。
流涙症
流涙症では、何もないのに目がうるんで見にくくなったり、涙でハンカチが手放せなかったり、目のまわりがただれてきたりします。
視力を失うようなものではありませんが、日常生活に支障が出ることがあります。
症状
- いつも涙があふれ、こぼれそう
- 目やにが以前より増えた
- 涙で視界が滲む
- 目頭が赤い
- 目頭が腫れて痛い
- 目のまわりがただれている など
当院で行う涙道手術
当院では以下の「涙道チューブ挿入術」を行っています。
涙道チューブ挿入術
涙道内視鏡というカメラを使用して、涙道内を掃除しながら、狭い部分の拡張や閉塞部分を開通して、最後にチューブを挿入する手術です。
手術内容
- 局所麻酔を行います
- 涙道内視鏡を挿入して、狭窄部や閉塞部を拡張し、涙道チューブを挿入します。所要時間は10分程度です(閉塞の程度により多少前後します)
- チューブは2ヶ月前後留置したのち抜去します
涙道の閉塞が非常に強い場合や強い炎症を伴う場合は次の涙嚢鼻腔吻合術の適応となります。
涙嚢鼻腔吻合術
鼻の中から、涙の流れ道と鼻内の間にある骨を少し削ることで、涙の流れ道と鼻内の間に新しい流れ道を作成します。
適応は、涙道チューブ抜去後に再閉塞した方や鼻涙管の閉塞期間が長く、閉塞が強度になっている方、閉塞により涙嚢炎を繰り返している方です。
鼻外法 | 鼻内法 | |
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手術の方法 | 皮膚を切開して鼻の外側から手術を行う | 皮膚を切らずに鼻の内側から内視鏡を用いて手術を行う |
麻酔 | 局所麻酔でも可能だが、全身麻酔で行うことが多い | 全身麻酔を使用することが多い |
手術内容
鼻外法 | 鼻内法 | |
---|---|---|
麻酔方法 | 全身麻酔 | 全身麻酔 |
切開の位置 | 目頭の下のシワに沿って約2cm | 皮膚を切る必要はなく、鼻の中から内視鏡を挿入 |
手術方法 | 切開から手術を行う | 内視鏡を使って手術を行う |
抜糸時期 | 1週間後 | 不要 |
涙道手術の流れ
Step1診断・検査
まずは検査を実施し、診断を行います。
検査項目 | 検査内容 |
---|---|
涙液量の測定 | 眼球表面の涙の量を測定する検査 |
涙道通水検査 | 水を涙点から流し、鼻まで流れているかどうかを確認する |
涙道内視鏡検査 | 直径約1mmの内視鏡を使用して涙点から直接観察する |
手術が決まると、手術に必要な検査を行います。
検査項目 | 検査内容 |
---|---|
採血検査 | 全身状態や感染症の有無等を確認する |
Step2手術の説明
検査結果をもとに手術についての説明を行います。手術方法についての詳細や合併症のリスクなどについてもお伝えします。
Step3手術当日
- 手術30分前にご来院いただき、準備が整い次第手術室に入室します
- 内視鏡で涙道の膿や汚れなどを除去し、狭窄・閉塞部を押し広げ手術を行います
- 術後は、回復室で休憩していただき、問題がなければご帰宅となります
- 抗菌剤・抗炎症剤の点眼が処方されますので指示通りに点眼してください
- 痛みが出た場合の鎮痛薬が処方されます。用法用量を守って痛みが出た時のみ内服してください
- 涙道内にチューブが入っています。チューブを抜去するまでは鼻を強くかまず、くしゃみも控えめにしてください
- 首から下のシャワーは可能です。洗顔や洗髪は翌日までお控えください
Step4通院・チューブ抜去
手術後は1~2週間に1回の間隔で定期検査を受けていただき 、手術から約2カ月後に留置したチューブを抜去します。
涙道手術の費用
1割負担 | 3割負担 | |
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涙道チューブ挿入術 | お問い合わせください | お問い合わせください |
涙道手術後の注意事項
- 手術後は麻酔の影響で一時的に見え方が悪くなります。手術当日は車・バイクでの来院はお控えください。
- 手術当日は日常生活以外の運動は控えてください
- 首から下のシャワーやお風呂は可能です。翌日からは洗顔や洗髪、運動、化粧も制限はありません
- 食事の制限はありませんが、手術当日は飲酒はできません
- チューブは2ヵ月ほど留置し、抜去します
- チューブを留置している間は、チューブが目頭部分から少し出ていますが、触らないようにしてください
- 手術後数日は鼻水や涙に少量の血液が混じることがありますが、心配ありません
- チューブが留置されている間は、強く鼻をかまない、くしゃみをなるべく小さく行うようにしてください
- 1ヶ月程度で涙や目やには減っていきますが、目やにが溜まって気になる場合は、清潔な綿棒を使用して掃除をしてください