結膜炎とは
感染性結膜炎は、細菌やウイルスが目に感染し、白目の一番表面の膜である結膜に炎症を起こす病気です。ウイルス性結膜炎の中でも、人に感染しやすいものを「はやり目」と言い、代表的なものとして「流行性角結膜炎」「咽頭結膜熱」「急性出血性結膜炎」の3つがあります。
ウイルスによる結膜炎には「はやり目」の他に、単純ヘルペスウイルスや帯状ヘルペスウイルスによるものもあります。しかしこれらのウイルスは人に感染することは少ないです。
結膜炎は、目に不快な症状があらわれることがほとんどですが、プール熱のように目の症状だけでなく、のどの痛みや発熱といった、風邪に似た症状を引き起こすこともあります。
結膜炎の症状
結膜炎は目に不快な症状が出ることが多いですが、目の症状だけでなく全身症状が現れるものもあります。
- 涙が出る
- 目がゴロゴロする
- 目やにが出る
- 目が充血する
- まぶたが腫れる
- リンパ節が腫れる
- プール熱の場合:発熱・のどの痛み
結膜炎の原因と種類
感染性結膜炎の原因には、大きく分けて、細菌による感染と、ウイルスによる感染があります。
ウイルス性結膜炎
ウイルス性結膜炎は、伝染力が非常に強いため、注意が必要です。目を擦った手やハンカチなどから他の人に感染することがよくあります。
感染してから1~2週間遅れて症状があらわれます。 突然、目に何か入っているかのようにコロコロしたり、充血、まぶたの腫れ、たくさんの目やにや涙が出たりします。10日ほどしてから角膜に炎症が起こり、目がかすむこともあります。治るのに2~3週間かかります。他の人にうつさないためにも、適切な治療を受けましょう。
原因
ウイルス性結膜炎の代表的なものには、流行性角結膜炎、咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎があります。流行性角結膜炎と咽頭結膜熱の原因はアデノウイルスで、急性出血性結膜炎の原因はエンテロウイルスかコクサッキーウイルスです。感染してから発症するまでを潜伏期といいますが、アデノウイルスでは約1週間、エンテロウイルスでは約1日です。
細菌性結膜炎
細菌性結膜炎は感染性結膜炎の一種で、細菌の感染が原因で起こる結膜炎です。子供や高齢者に多い目の病気です。薬が効きやすく治りやすいのが特徴です。しかし細菌性結膜炎の中には、適切な治療を受けないと視力低下に繋がる疾患もあるため注意が必要です。
粘く黄みがかった目やにが多く出て、白目が充血します。
うつることは稀ですが、体力の落ちている方や乳幼児には注意が必要です。
原因
インフルエンザ菌や黄色ぶどう球菌、肺炎球菌、表皮ぶどう球菌などの菌に感染して起こります。
乳児期はインフルエンザ菌が原因でインフルエンザに併発して症状が現れやすく、小児は肺炎級于禁が原因で風邪に併発して症状が出やすいです。また高齢者は、抵抗力が低下した時に常在菌である黄色ブドウ球菌が原因で慢性化しやすくなっています。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストなどのアレルゲンが原因で引き起こされる結膜炎です。充血や目やに、目のかゆみや涙の増加が特徴です。感染力はなく、アレルゲンから離れることで症状が軽減します。ほとんどの方が、花粉の影響と言われています。
原因
通年性の原因で多いのはダニやカビ、ハウスダストです。季節性の原因ではスギやヒノキなどの花粉です。コンタクトレンズ使用による機械的刺激によるアレルギー性結膜炎の方も増えてきています。
結膜炎は自然治癒する?
結膜炎はよくみられる目の病気です。自然に治るような軽い結膜炎もあれば、休養が必要なものから、視力低下などの後遺症を残す結膜炎もあり、注意が必要です。特に乳幼児の場合は抵抗力が弱く、角膜炎から眼内の感染症に至って失明することもあるため必ず受診しましょう。
うつる結膜炎とうつらない結膜炎
うつる結膜炎
ウイルス性結膜炎の中でも、人に感染しやすいものは「はやり目」と呼ばれており、代表的なものには、流行性角結膜炎、咽頭結膜熱、クラミジア性結膜炎の3つがあります。
流行性角結膜炎
流行性角結膜炎はアデノウイルスに感染して起こる疾患で感染力が強く、タオルやドアノブなどの感染者が触れたであろうものを介して感染します。
主な症状として充血、目やに、痛み、涙などがあり、悪化すると角膜の炎症後の混濁が残ることがあります。
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)は、流行性角結膜炎と同じくアデノウイルス感染による疾患で、名前の通りプールを介して広まるケースが多いです。主な症状として充血、目やにがあり、他にも咽頭痛や発熱などの症状が見られます。
クラミジア性結膜炎
クラミジア性結膜炎は、性感染症の病原体であるクラミジアとトラコマティスに感染して起こる疾患で、性交時に感染することが多いです。主な症状として、充血、目やに、目の痛み、異物感などの症状が現れ、悪化すると視力低下に繋がります。
うつらない結膜炎
結膜炎の中でも、感染力がないものもあります。 細菌性結膜炎は、結膜炎の中で最もよく見られる疾患で、細菌感染で起こります、充血や目やにといった症状が起こりますが、点眼治療を行うことでほとんどの場合は1週間以内に症状は治まります。感染力はありません。
アレルギー性結膜炎は花粉やハウスダストなどのアレルゲン物質に感染することで起こる結膜炎で、主な症状としてかゆみ、充血、異物感、瞼の腫れなどが起こります。目をこすると症状が悪化する可能性があるので、かゆくてもこすらないようにしましょう。原因となるアレルゲンがなくなれば症状は軽減するため、感染力はありません。
結膜炎の検査
結膜炎の検査は、細隙灯顕微鏡検査のもと特徴的な所見がないか診察で確認します。細隙灯顕微鏡での観察では、下まぶたの濾胞が観察されます。また、合併症として角膜混濁が認められることがあります。点眼で治療でき、放置すると混濁が残ってしまうので、発症後2週間程度で細隙灯顕微鏡検査をする必要があります。
また、アデノウイルス検査キットを用いて、結膜に麻酔の点眼をしてから目やにや結膜上皮細胞を採取して溶かし、キットに流すと、アデノウイルスが結膜に存在するかを検査します。
結膜炎の治療方法
ウイルス性結膜炎
ウイルス性結膜炎は、ウイルスを根本的に退治する薬はありません。そのため、体内で抗体が作られて症状が落ち着くのを待つしかありません。対症療法として炎症を抑え、細菌による2次感染を防ぐために「非ステロイド性抗炎症薬」や「ステロイド薬」の点眼、「抗菌薬」の点眼などを使用します。
ヘルペスウイルスに対しては、抗ヘルペスウイルス作用を持つ薬がありますが、症状が結膜炎だけの場合、迅速診断キットなどではヘルペスを検出できないために、治療できない場合がほとんどです。まぶたに発疹がある場合には抗ウイルス薬の眼軟膏を用います。また、症状によっては抗ウイルス薬の内服や点滴治療を併用することもあります。
細菌性結膜炎
細菌性結膜炎は、「抗菌点眼薬」を使用します。多くの場合、原因菌にあった点眼治療を行うことによって、3日から1週間程度で症状が軽減します。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎は、抗アレルギー点眼薬(抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエータ遊離抑制薬)を使用します。重症の場合には、ステロイド点眼薬や免疫抑制点眼薬などを使用する場合があります。
花粉症に対しては、花粉が本格的に飛ぶ前から、または少しでも症状があれば、早めに「抗アレルギー点眼薬」を開始すると効果的です。症状が出る前の、花粉飛散時期の約2週間前から、または症状が少しでもあらわれたら、抗アレルギー点眼薬による治療を始める方法で、花粉飛散ピーク時の症状が軽くなります。
市販の目薬を使用する場合
結膜炎の症状が現れた場合、市販の目薬を使用することも可能です。ウイルス性結膜炎や細菌性結膜炎が疑われる場合は、抗菌目薬を使用しましょう。抗菌目薬を使用することで、目の充血や痛み、腫れなどを軽減し、菌の繁殖を防ぐことができます。
アレルギー性結膜炎の場合は、抗ヒスタミン剤を配合した点眼薬を使用しましょう。花粉やハウスダストなどのアレルゲンから結膜を保護し、症状緩和が期待できます。感染性か非感染性かわからない場合や、市販の目薬を2~3日使用しても症状が改善しない場合は眼科を受診しましょう。
結膜炎の症状がある場合の注意点
うつる結膜炎の場合
ウイルス性結膜炎は非常に感染力が強いため、診断されたら、周囲の人に感染を広めないことが大切です。ウイルス性結膜炎に、特効薬などは存在しないため、治癒させるためには1~2週間は安静に過ごしましょう。
ウイルス性結膜炎は学校伝染病に指定されており、一般的には発症してから1~2週間は休む必要があり、咽頭結膜熱は主要症状がなくなった後、2日経過するまで学校を休むよう規定されています。社会人の方も、できるだけ人と接触する期間を減らし感染予防に努める必要があります。
ウイルス性結膜炎は感染力が強く、目をこすった手やハンカチなどから感染することが多いです。手は流水や石鹸でよく洗い、タオルは家族とは分けて使用する。目を擦った手で周囲を触らないなど注意をしましょう。
うつらないアレルギー性結膜炎の場合
アレルギー性結膜炎では、花粉などの原因となるアレルゲンの侵入を防ぐために、花粉防止メガネの装着や帰宅時に洋服を払うなどの対策が効果的です。またダニやカビ、ホコリなどの発生を防ぐために、室内を清潔にするよう心がけましょう。 また汚れたコンタクトレンズを使用することでアレルギー反応を起こすこともあるため、コンタクトレンズは正しく使用・洗浄し、清潔を保つように注意しましょう。